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それはスポットライトではない ― カルメン・マキ [音楽]

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カルメン・マキ (dot.asahi.com/2019.4.24より)

〈それはスポットライトではない〉(It’s Not the Spotlight) は1973年にジェリー・ゴフィンとバリー・ゴールドバーグによって作られた曲である。本人たちの歌唱をはじめとして、何人もの歌手たちによってカヴァーされているが、日本では浅川マキが日本語詞にしてアルバム《灯ともし頃 MAKI VII》(1976) に収録された。〈それはスポットライトではない〉の英語詞部分を歌っているのはドラマーのつのだ☆ひろである。西荻窪アケタの店における録音であるがライヴではない。まだ売れる前の坂本龍一がオルガンで参加していることでも知られる (ジェリー・ゴフィンはキャロル・キングの最初の夫であり、初期作品のパートナーである)。

数日前、キアロスタミの《ライク・サムワン・イン・ラブ》の記事を書いてから、〈硝子坂〉という曲が気になってYouTubeなどを含め、いろいろと聴いていた。高田みづえといえば〈硝子坂〉と並んで思い出されるのが〈私はピアノ〉である。
そうやって聴いているうちに連想がメタモルフォーゼして、なぜか〈私は風〉に辿り着いてしまった。〈私は風〉はカルメン・マキの1978年の作品である。カルメン・マキはいわゆるフォーク系の歌手であったが、のちにロック系の曲へと志向が変わってゆく。そしてカルメン・マキも浅川マキも寺山修司と関係が深いのが共通している。
カルメン・マキを私はあまり知らないのだが、何かのきっかけで1978年のライヴ盤を聴いていたときがあって、〈空へ〉と〈私は風〉だけは 「重い曲だなあ」 と思いながらも、繰り返し聴いていたような気がする。

そのカルメン・マキの歌っている〈それはスポットライトではない〉に引き込まれてしまった。《CARMEN MAKI 45th Anniv. Live》というBlu-ray/DVDに収録されている映像だと思われるが、このパワーはすごい。歌詞は浅川マキ・ヴァージョンだが、モノクロームで収録されているのも郷愁を誘う。
歌手によってひとつの曲が異なった貌を見せてくれる例のひとつである。

〈私は風〉についても別のヴァージョンがあって、それは中森明菜の歌唱である。中森明菜の〈私は風〉はカルメン・マキのパワーとは全く異なったアプローチによる表現であるが、それゆえに中森明菜の 「私の風」 なのだ。

浅川マキはCDの音を嫌い、生前はアルバムをCDでリリースすることに消極的であったという。デジタルな音への拒否反応であり、自分の音はそうではないという確信があったのだろう。それは現在に至るまで、まだ受け継がれているように思える。彼女の遺志である。
最近、アナログレコードが復権していて、CDとレコードとが並列してリリースされたりするのは、ノスタルジアだけでなく、そうした 「強い音」 への期待である。つまり浅川マキの選択は間違っていなかったのだと言える。


CARMEN MAKI 45th Anniv. Live (ZICCA RECORDS)
CARMEN MAKI 45th Anniv. Live ~Rock Side & アングラSide~ [2Blu-ray Disc+CD]




カルメン・マキ/それはスポットライトではない
CARMEN MAKI 45th Anniv. Live
https://www.youtube.com/watch?v=A2hVtGnRKNA

カルメン・マキ/私は風
https://www.youtube.com/watch?v=s93kMH_5syM

浅川マキ/それはスポットライトではない
京大西部講堂 1977年Live
https://www.youtube.com/watch?v=9ub9AscfikA

中森明菜/私は風
1994 Parco Theater Live
https://www.youtube.com/watch?v=fi25Q-PtVdk
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コメント 14

英ちゃん

私の名前はカルメンです。もちろんあだ名に決まってます。?(゚□゚)
これは、カルメン'77ですがw
そう言えば昔、中野で高田みずえとすれ違った事があったな(゚□゚)
by 英ちゃん (2019-04-29 00:33) 

(。・_・。)2k

カルメン・マキさん
声がスゲ〜 カッコイイですね
女性らしい優しい声だったりもしてメッチャ良いなぁ

by (。・_・。)2k (2019-04-29 01:00) 

lequiche

>> 英ちゃん様

ああ、そういう曲ありましたね。
中野というとまだ二子山部屋の頃でしょうか。(^^)
by lequiche (2019-04-29 01:39) 

lequiche

>> (。・_・。)2k様

この声はすごいです。
全然衰えていないというのが、ありえないというか。
後半のシャウトしているあたりは震えます。
by lequiche (2019-04-29 01:45) 

向日葵

懐かしいですねぇぇ。。
まだ現役で活動しているのでしょうか・・??
by 向日葵 (2019-04-29 03:43) 

lequiche

>> 向日葵様

リンクしたライヴ映像は2014~2015年収録ですが、
全く声は衰えていません。バリバリ現役です。
ごく初期のフォーク調の曲 (wikiによれば歌謡曲)
も多少ありますが、ほとんどは
ジャニス・ジョプリンのフォロアー的なロックです。
春日博文だけでなくCharのギターも聴けます。
HPによると、今月は吉祥寺でのライヴもあるようです。
by lequiche (2019-04-29 04:18) 

NO14Ruggerman

リンクの4曲を視聴しました。
カルメン・マキといえば「時には母のない子のように」のヒット
が強烈すぎそのイメージしか持ってなかったのですが
ガラッと変わってまさにジャニス・ジョップリンですね。
思わずライブで聴きたくなる迫力・熱唱です。
バックでドラムを叩いているのは佐藤正治氏で
ヒカシューのドラマーなのでライブでよく聴いています。
彼のさばきもまたロックやジャズの要素が盛り込まれ
エネルギッシュで素晴らしいプレーヤーだと感じています。
by NO14Ruggerman (2019-04-29 15:32) 

末尾ルコ(アルベール)

カルメン・マキは不思議な人で、その名はいつしかわたしの中でも響き渡っていたのですが、具体的に彼女の活動や歌などについてはほとんど知りません。
確かにわたしはリアルタイムでカルメン・マキの大活躍を体験してはいませんが、その割には「カルメン・マキ」という名は強烈に刻印されているのですね。
その存在と名前の響きには大きな力がある、そんな感じがいたします。

「それはスポットライトではない」など視聴させていただきました。
なにせ声のポテンシャルが違いますね。
腹の底から、しかも無理をすることなく発声される歌唱は、普通の日本人歌手が真似しようとしても到底無理でしょう。
日本人的ないささか線の細い声質ならではの表現ももちろんあるのですが、太く豊かな声量でなければ表現できない境地も当然ながらあります。
そしてややシンプル過ぎる言い方になりますが、「スピリット」や「ソウル」があるかないか、そしてどれだけのものかといった面でも、カルメン・マキは特筆すべき人なのだと思います。
「人間」って、絶対歌にでますからね。

「私はピアノ」というタイトルも振り返ればエロティックですね。
恋している女性に、「わたしはあなたのピアノよ」とか言われたら、まさにそこが桃源郷・・・といった妄想はこの辺りにいたしますが(笑)、「硝子坂」のお話しは本当にインパクト抜群です。
最近坂道を見かけたら、上の方で手だけが(おいで、おいで)としている景色がわたしの中に浮かび上がり、不気味にワクワクするのです。

>つまり浅川マキの選択は間違っていなかったのだと言える。

本当にそうですね。
いずれ、「やはり紙の本がよかった」とか「映画は映画館でないと」とかいうこともあり得ます。
まあ映画館での鑑賞は日本ではやたら高額なので、ある程度はテレビ画面で鑑賞も致し方ないですが、スマホで鑑賞したつもりになるのは許せません。
要するに、すぐに「もうこれはオワコン」とかのたまう手合いが嫌いなのです。
こういう人たちは、歴史の総体を見てませんからね。
その辺のにいちゃん・ねえちゃんがこういうことを言うのは仕方ないのかもしれませんが、「若手論客」とか「著名ブロガー」とかいった人たちもよく「オワコン」連発していますが、いつかきっと報いが訪れるはずです。

・・・

アッバス・キアロスタミって、日本では一般的に知られてないのはもちろんですが(笑)、映画ファンも案外初期の作品の印象が強く、『ライク・サムワン・イン・ラブ』について語る人ってあまりいないのですよ。
だから前回のお記事、(はっ!)としてとても嬉しかったんです。
昨今は自覚的に映画を観る人自体少なくなっている上に、「映画ファン」を自認している人たちでも、「アメコミヒーローこそ最高の映画」と信じている若い人たちも多いんです。
『アベンジャーズ』もそりゃけっこうですが、映画はああいうものばかりではないし、ハリウッドの専売特許でもないということなど、知らない人が多くなってるんですね。

>受け身なエンターテインメントしか理解できないのです。

まったくそうなのですよね。
人間の想像力は圧倒的に衰退しつつあります。
ところがスゴイ考えを持っている人もいて、「読書は読むだけだけれど、ゲームは参加できるのでずっと能動的だ」とか信じている人もいるのです。
なかなか言葉、通じそうにないですよね。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2019-04-29 17:20) 

きよたん

浅川マキもカルメンマキもいい声してますよね
by きよたん (2019-04-29 20:01) 

lequiche

>> NO14Ruggerman 様

〈時には母のない子のように〉のような歌謡曲の時代は
ほんの数年で、それ以後は40年以上、ずっとロックです。
浅川マキの場合も、寺山時代とそれ以後とでは、
わかりにくいですけどあきらかにコンセプトが違います。
といっても浅川マキには〈裏窓〉という
寺山詞による傑作がありますので寺山との関係が継続しますが、
カルメン・マキは完全に切れていますね。

あぁ、ヒカシュー! そうですね。
このライヴはすごいメンバーが入れ替わり立ち替わりです。
私は水橋春夫の〈時計を止めて〉が選曲されているので
かなりびっくりしましたが、
そのあたりは簡単に書けることではないので。
(水橋春夫は昨年亡くなりました)
by lequiche (2019-04-29 23:45) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

カルメン・マキはアメリカ人・父と日本人・母のハーフですから、
それも父親はアイルランド系アメリカ人ですので、
やはりロックな血というのはあるのかもしれません。
彼女は寺山修司の天井桟敷でデビューして、
歌手として出した歌も大ヒットしたのにもかかわらず
歌謡曲系からロックへと移行したのも
ジャニスを聴いたのがそのきっかけだったとのことです。
寺山修司には日本の土俗的な風土をベースとした
アヴァンギャルド性はあると思いますが、
音楽的な知識はあまり無かったような印象があります。

〈硝子坂〉はガラスが何を意味しているか、ですね。
この曲って考えようによってはオカルトです。
〈私はピアノ〉は桑田佳祐の作品ですが、
桑田の曲には常にダブル・ミーニングがあります。
そういうふうに見ていくと、高田みづえ、結構すごいな、
みたいな感じがあります。(何がすごいかは書きませんが)

硝子坂
https://www.youtube.com/watch?v=wsgVIEdJy5Q
私はピアノ
https://www.youtube.com/watch?v=61OyycYfnY4

日本ではオートマ車が良いとなると皆、オートマ車、
CDが良いとなるとレコードなんか捨ててしまう。
そして今は電子書籍イチオシの時代です。
何でもそうです。すぐに新しいものに飛びつく。
そうした新しいものへの選択を自分でしているように
錯覚していますが、単なる経済効率で
そのように仕向けられているだけなのが分かっていません。
制御しやすい消費者ばかりです。
どこかで舌を出している狡猾な人間が存在します。

キアロスタミ、知られていないんですか?
……そうなのかもしれませんね。
でもアメコミっていうのはもともとカルトなジャンルのはずで、
それがあまり主流になってもてはやされてしまうのは
違うような気がします。
アメコミヒーローも居心地悪いんじゃないかと思いますが。

ゲームは参加できるという錯覚も、
まさに《華氏451》で描かれている未来世界と同じです。
TVのインタラクティヴ性による視聴者投票とか、皆そうです。
衆愚政治なので当然そのように持って行くのは自明なのです。
クラウドも、個人的な所有をさせないようにするための
衆愚政治の一環だと認識しなければなりません。
電子書籍はその象徴です。
本を電子書籍だけにして、ある日、そのアーカイブを
消滅させれば、本はこの世から消去されます。
為政者にとって本は衆愚たちの知恵の実であり害悪なのです。
《華氏451》はSFではなく、予言なのです。
by lequiche (2019-04-29 23:53) 

lequiche

>> きよたん様

声の魅力というのはありますね。
歌のウマイ/ヘタより、まず声が重要です。
by lequiche (2019-04-29 23:54) 

すーさん

カルメン・マキさん、嫁があんまり好きでないので
再生させてもらえませんが、
風呂で一人の時にひそかにCD流して聴いてます(笑)


by すーさん (2019-04-30 11:50) 

lequiche

>> すーさん様

あ~、そうなんですか。(^^)
でもお風呂でCD聴けるのってすごいですね。
by lequiche (2019-05-01 14:01) 

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