So-net無料ブログ作成

デヴィッド・シルヴィアン《Brilliant Trees》 [音楽]

sylvian_BrilliantTrees_190315.jpg

デヴィッド・シルヴィアンのベストは最初のソロである《Brilliant Trees》だと思う。もちろんアルバム毎にだんだんと音楽的な深みとかは増していくのだけれど、ロックとしてのリズムが欲しいと私は思うので、つまりある意味、いつまでもジャパンの幻影を追っているというのは確かにあるのかもしれないと思う。どんどんリズムが無くなっていってしまうのは、そうした沈潜した静謐な音楽へと行きたいのかもしれないのだがリスナーにとっては少ししんどい。

近年のアナログ盤復活に乗ったのか、アナログが再発されている。今回のはソロになってからの最初の4枚、つまり《Brilliant Trees》(1984)、《Archemy》(1985)、《Gone to Earth》(1986)、《Secrets of the Beehive》(1987) である。これら4枚は1年に1枚という規則的なインターヴァルでリリースされたが、以降はソロでない作品が続くため、この最初の4枚をアナログで再発するということには一定の意義がある。つまり比較的ロックな作品であるということにおいて。
ところが《Secrets of the Beehive》以外はジャケット・デザインがオリジナルではない。《Brilliant Trees》は黄色地の中央にワクをとったポートレイトだったのが、今回はポートレイトのみが拡大されているのでそれだとわかるが、《Archemy》と《Gone to Earth》は新たに起こされたデザインである。こういうのってどうなのだろうか (尚、《Secrets of the Beehive》もロゴの位置などがオリジナルとは微妙に異なる)。
また《Secrets of the Beehive》のボーナス・トラックは最初のリリース時は〈Forbidden Colours〉だったが、CDがリマスターされたとき〈Promise〉に差し替えられた。今回のアナログ盤もこのリマスター盤を踏襲していて〈Promise〉である。〈Forbidden Colours〉とは大島渚の映画《戦場のメリークリスマス》(1983) のテーマ曲のヴォーカル・ヴァージョンである。

昨年は、ジャパンで最もポピュラーなアルバム《Gentlemen Take Polaroids》と《Tin Drum》もアナログ盤が再発されたのだが、幸いなことにデザインはオリジナル通り。だが、それぞれ45rpm2枚組という仕様で、Mobile Fidelityかと思ってしまう。45rpmは回転数を上げることで音質を稼ごうとしているのだろうが、サーフェスノイズもせわしなくなってしまうような気がしてあまり好きではないのだ。
ただ、どちらにせよ一定の需要が見込まれるからこうしたアナログ再発がされているのだろう。オリジナルがアナログ盤で出されたアルバムは、LPジャケットとしてのイメージが残っているので、CDで出されたものはLPのミニチュア化でしかなくて、つまり軽薄な外見のCDより、LP本来の存在感をどうしても求めてしまうのが最近の需要なのだろうと思う。それは音楽配信で良しとする感覚とは全く反対のベクトルである。そうしたアナログかデジタルかという選択は今後も続いていくのだろう。

話を戻して《Brilliant Trees》である。
話題になったのは4曲目の坂本龍一が入っている〈Red Guitar〉だが、カッコよくていかにもシルヴィアン風な音作りに懐かしさを覚えてしまうのが最初の曲〈Pulling Punches〉である。ジャパンの3rd《Quiet Life》からのシークェンス・パターンをモロに打ち出す方法論が次第にリズムを重視した方向になっていった結果が《Tin Drum》となり、その延長線上でさらに進化したのがソロ1stのこのアルバムなのではないかと思う。
〈Pulling Punches〉で一番目立つのはトランペットのマーク・アイシャムだが、この曲でギターを弾いているのはロニー・ドレイトンで、彼はビル・ラズウェルのマテリアルのアルバム《One Down》(1982) にも参加しているし、ジェイムス・ブラッド・ウルマーの《Blues Allnight》(1989) にもその名前がある。
ブラッド・ウルマーは80年代の終わり頃、LIVE INNで聴いたような記憶があるが定かでないし、あまり印象も残っていない。だがドレイトンはその系統のギタリストなのだと思えばそういう感じもする。
そして坂本龍一の1984年といえば《音楽図鑑》であり、シルヴィアンの音作りにもその影響がみられる。さらにいえば、どちらかというともう少し後の、もっとキツい音に近い。

《Secrets of the Beehive》の後、シルヴィアンにはしばらく双頭バンド的なコラボのアルバムが続く。80年代後期のホルガー・シューカイや90年代始めのロバート・フリップなど。ソロとしてのアルバムは1999年の《Dead Bees on a Cake》まで無いのだ。そして21世紀になってからは、いわゆる静寂、沈潜というような音づくりがメインとなり、それはそれで濃密な作品なのだが、やはり私はリズムが欲しいのだ。

ブロンド・レッドヘッドがシルヴィアンをフィーチャーした〈Messenger〉はそれなりに聞きやすい。下記にリンクしたのはなぜかタルコフスキーの動画になっているが、《Brilliant Trees》に収録されている〈Nostalgia〉はタルコフスキーへのオマージュとして書かれた曲である。


sylvian_SecretoftheBeehive_190315.jpg

David Sylvian/Brilliant Trees (12inch analog/Virgin)
Brilliant Trees -Hq- [12 inch Analog]




David Sylvian/Secrets of the Beehive (12inch analog/Virgin)
Secrets of the.. -Hq- [12 inch Analog]




David Sylvian/Pulling Punches
https://www.youtube.com/watch?v=aD5YHfIvYxc

David Sylvian/Brilliant Trees
https://www.youtube.com/watch?v=XfhGDTTR99Y

Blonde Redhead feat. David Sylvian/The messenger
https://www.youtube.com/watch?v=y_edyyjbDKE

Japan/Nightporter & Art of Parties
(Art of Partiesのギターは土屋昌巳)
https://www.youtube.com/watch?v=uaSak_o9IEQ
nice!(91)  コメント(12) 
共通テーマ:音楽

nice! 91

コメント 12

末尾ルコ(アルベール)

母へのお言葉、ありがとうございました。
本日からHCUに移っておりまして、どうにか回復傾向です。
詳細は今夜アップの記事で書かせていただいております。
こうした折でも、できるだけいつものことはやっていこうと思っておりまして、lequiche様へのコメントもいつも通り書かせていただきます。

・・・

『Tin Drum』が1981年リリースで、フォルファー・シュレンドルフ監督の『ブリキの太鼓』がカンヌ国際映画祭パルム・ドール賞、アカデミー外国語映画賞を獲得したのが1979年度ですから、当時は(シルヴィアン、映画好きだな)と思ったものです。
ただ、殊更ジャパンやシルヴィアンを追っていたわけではないので、実際に『ブリキの太鼓』の影響があったかどうかは知りません。
でもタルコフスキーへのオマージュもあるということですね。
シルヴィアン、いかにもヨーロッパ映画が好きそうですよね。(ロシアがどれだっけヨーロッパなのかというテーマはありますが)。
ジャパンはデビュー時からリアルタイムで知っておりますが、日本での人気は多少クイーンと共通点がありました。
まずヴィジュアルが日本の女性ロックファン向きであるということと、音もハードやヘヴィーになり過ぎないところもしっくり来たのだと思います。
チープ・トリックの人気はジャパンやクイーンとは異なっていましたが、ロビン・ザンダーという、これまたベビーフェイスの人気者がいたことは大きかったですね。
個人的にはデビュー時のジャパン、(冗談はよしこさん!)という感じでしたが、だんだんと(あれ?いいじゃない・・・)と感じるようになりました。
『Tin Drum』を初めて聴いた時は、坂本龍一そのものと感じましたが(笑)。
『戦場のメリークリスマス』は封切時に映画館で観ましたが、高知の劇場が超満員でしたよ、大島渚の映画なのに(笑)。
この作品に関しては、少なくとも日本の時代の流れにバッチリ合った感があります。
未確認情報ですが、当初大島渚はロバート・レッドフォードと沢田研二をキャスティングしたかったとも言われてました。
レッドフォードであれば、当時のボウイよりも遥かにグローバルなヒットがあり得たかもしれませんが、日本ではさほどウケなかったでしょうね。
しかし考えてみれば、デヴィッド・ボウイとデヴィッド・シルヴィアンの両方が関わっていた作品なんですね。
『戦場のメリークリスマス』は今観ても、かなり笑える部分もあって、愉しめます。

>リズムが欲しいのだ。

なるほどです。
わたしはシルヴィアンのソロを系統立てて聴いてないのでその辺りはよく分からないのですが、シルヴィアンの声はもともとかなりねっとりしていますので、重めの曲が続くともたれてくるというのは分かります。

・・・

>やたらにカメラを切り替えたり

それ、ありますよね。「一つの映像作品」としてライブ映像を作るというコンセプトなので仕方ないのでしょうが、観客の様子とか、確かに臨場感や迫力を感じさせる上では大きいですけれど、(おいおい、ここはステージを映すべきだろう)と思うことはしょっちゅうです。
まあ、どこを切ってどこを入れるかという判断は本当に難しいですよね。
凝ったカメラワークのライブ映像ばかりなので、たまにステージ全体を固定で捉えているだけという映像があると新鮮です。
ダンスパフォーマンス、ダンスを含んだパフォーマンスなど、フォーメーションがきっちり分かりますからね。
劇場の2階席から観る感覚です。

>その演奏を聴きながら同時に自分の過去を聴いているような

これは凄いお言葉ですね!
う~ん、「自分の過去」・・・この感覚、音楽を聴く際にちょっと意識してみたいと思います。
わたしに感じられるかどうかは分かりませんが(笑)。

翻訳と言えば、例えば上田敏が訳したルコント・ド・リールの「真昼」とか、凄い言葉使ってますよね。
好きか嫌いかと問われれば、けっこう好きなのですが、オリジナルのニュアンスやリズムからは遠ざかっているような感はあります。                  RUKO



by 末尾ルコ(アルベール) (2019-03-15 18:08) 

salty

JAPANツアー、中野サンプラザへ行きましたよ!
ソロになった後もこのアルバムだけは買いました。ずいぶん前にラジオで流れた曲・・なんとかスノウ?探そうと思っているうちにうやむやに・・。
by salty (2019-03-15 20:09) 

Boss365

こんにちは。
ジャパン、懐かしい!!デヴィッド・シルヴィアン、アルバム探したら「Everything and Nothing 」「Dead Bees on A Cake」坂本?「Bamboo Houses」ありました。確かにリズムのない世界は、息苦しく感じる時あります。セルジュ・ゲンスブール的?な感じもあるかな?イギリス版つぶやき?「Brillant Trees 」映像を見ながら聴くと「静寂で澄みきった世界観」を感じます。良いスタンスで芸術活動されていると思います!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2019-03-16 12:27) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

あまりご無理はなさらないでください。
もっとも気分転換としてのブログでしたら
それはそれでよろしいかと思います。

《Tin Drum》はChinaがキーワードですし
ジャケットも毛沢東のポスターが背景にありますが、
タイトルは《ブリキの太鼓》を意識していると思われます。
でもフリッツ・クライスラーの有名なヴァイオリン曲に
〈中国の太鼓 Tambourin chinois op.3〉というのもありますから
その連想もあるかもしれません。
《Tin Drum》とシルヴィアンの最初のソロ4作中の3作――
《Brilliant Trees》《Gone to Earth》《Secrets of the Beehive》
はスティーヴ・ナイのプロデュースですが、
ナイはブライアン・フェリー、ペンギン・カフェ、XTC、
そしてシルヴィアンのプロデュースという経歴ですので
この時期のシルヴィアンとの仕事は非常に評価できると思うのですが、
wikiを見ても詳しい経歴などが掲載されていないのが謎です。

ジャパンの初期の髪の長い頃は、本人たちも
「やらされてイヤイヤやっていた」 みたいに述懐していますが、
最近初めてその頃の動画を見ましたがこれはこれでいいんじゃない?
とも思いました。
音楽としてはアイドルっぽいですが、
それでもシンセの使い方などすでにマニアックですし。

シュレンドルフの映画《ブリキの太鼓》において注目すべきなのは
音楽を担当したモーリス・ジャールです。
モーリス・ジャールはジャン・ミシェル・ジャールの父親ですが、
モーリスのかかわった映画作品のリストはすごいです。
アラビアのロレンスとドクトル・ジバゴがアカデミー作曲賞ですが、
他にもシベールの日曜日、コレクター、地獄に堕ちた勇者どもetc.
タルコフスキーは結局ソ連を捨てていますから、
その作風的にもヨーロッパといってよいと思います。

《戦場のメリークリスマス》はその時代に合っていたのでしょうね。
北野武や坂本龍一など話題になる人を起用したこともあります。
沢田研二はボウズになるのがイヤで断ったという話を聞きました。
北野武はこの出演で映画に目覚めてしまったんでしょうね。
でもデヴィッド・ボウイが出演しながら音楽は坂本龍一で
デヴィッド・シルヴィアンというのがスリリングです。(^^)
坂本は《音楽図鑑》に対して
「少しポップに振れ過ぎてしまった」 と言っていましたから
むしろその後の《未来派野郎》あたりの音作りと
《Brilliant Trees》は共通性があるように感じます。

シルヴィアンの声はヘヴィーなのですけれど、
でも退廃とは少し違うと思うのです。
音楽自体も緻密で美しいのですが気軽に聴きにくくなっていますね。
逆にアンビエントとして小さな音で聴くのがいいのかもしれません。

ライヴのカメラワークの問題は、
ズバリ言ってしまえば椎名林檎のライヴ映像のことです。
何作か観たのですがさすがにこれは無理と思って
買うのを止めました。楽曲を殺す映像です。
以後、CDは買いますが映像メディアは買っていません。

過去の音楽を聴いているときに、
それを聴いていた過去の自分と現在の自分が重なるときが
最も音楽に深く没入しているときなのではないか、
と私は思うのです。
文章は行間を読め、というような言い方をしますが、
同様に音楽にも行間があってそこに自分の過去の記憶がある、
そんな気持ちになることがあります。

先日の話題として『O嬢の物語』の翻訳がありましたが、
高遠弘美訳では澁澤龍彦訳の問題点が指摘されています。
でも高遠訳が澁澤訳より良いかと言われると
意外にむずかしいです。澁澤は
「翻訳は原語が堪能じゃなくて日本語が堪能なことが重要」
と書いていました。
サリンジャーのライ麦畑にも野崎孝訳と村上春樹訳があります。
野崎訳は言葉がすでに古いですが、香気があります。
ホームズ訳も最近の翻訳のほうが研究が進んでいるのでしょうが、
やはり延原謙訳には魅力があります。
by lequiche (2019-03-17 01:31) 

lequiche

>> salty 様

サンプラザ! それはすごいですね。(^^)
スノウという言葉が出てくるのは、
Nine Horsesの《Snow Borne Sorrow》ではないでしょうか。
これはアルバム名であり、中に同名のタイトル曲もあります。
またはソロアルバムの《Manafon》には
〈Snow White in Appalachia〉という曲がありますが
なんとなくこれはお探しのとは違うのでは、と思います。
by lequiche (2019-03-17 01:32) 

lequiche

>> Boss365 様

《Everything and Nothing》はコンピレーションですが
なかなか良い選曲ですね。ジャケットもかわいいし。(^^)
〈Bamboo Houses〉もリミックスが入っていたと思います。
今回のアナログ盤が好評なら
《Dead Bees on a Cake》以後のアルバムもまた出そうですが、
出て欲しいような出て欲しくないような……う~ん。(^^;)

最近のデヴィシルは、もうやりたい放題という気もしますが、
《Naoshima》みたいなのはリュク・フェラーリの記事のとき
ちょっと書きましたが、
https://lequiche.blog.so-net.ne.jp/2012-02-03
ここまでやるか、とも感じますけれど面白いとも思うのです。
by lequiche (2019-03-17 01:33) 

たじまーる

何時も御訪問&コメントありがとうございます(*^▽^*)
眼の病気の為ソネブロは自粛(半分お休み)してました。
どうぞ宜しくお願い致します<(_ _)>

眼が調子良くなくとも大好きな音楽は楽しめますので
これからも音を楽しんで行きたいと思います(*^▽^*)
by たじまーる (2019-03-17 08:01) 

KOME

こんにちは。
エレクトリックな音楽ずっと作っていましたが、この頃休んでいます。
by KOME (2019-03-17 17:22) 

salty

you tube でさらって来ました。コレコレ!snow borne sorrow でした。ありがとうございます。
by salty (2019-03-17 22:28) 

lequiche

>> たじまーる様

そうですか。それはお辛いですね。
音楽を聴くことは目も酷使せず、
リラックスになるからよいと思います。
どうぞお大事に。
by lequiche (2019-03-17 23:08) 

lequiche

>> KOME 様

貴ブログにupされているのを聴かせていただきました。
素敵ですね。クリアな音色が良いです。
新たな作品を期待しております。

by lequiche (2019-03-17 23:13) 

lequiche

>> salty 様

そうでしたか。よかったです。
Snow Borne Sorrowは
サマディサウンドになってからの作品では
比較的聴きやすいと思います。
サマディからはデレク・ベイリーも
リリースされているんですよね。
もうメチャクチャ・・・あわわ、深遠なサウンドです。(^^;)
by lequiche (2019-03-17 23:30) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。