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夏至と冬至のあいだ — ラルフ・タウナー《Solstice》 [音楽]

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Ralph Towner

夏至を過ぎて、これから日は短くなるばかり。でも夏の暑さはこれから。
そんなときにラルフ・タウナーの《Solstice》を聴く。アルバム・タイトルはSolsticeだが、収録されている曲のひとつは〈Winter Solstice〉、つまり冬至だ。1974年の12月にオスロでレコーディングされ、1975年にリリースされたECM盤である。

私は1枚だけラルフ・タウナーのLPを持っていて、それがこの《Solstice》だったのだが、魔が差したのか (というのは言葉遣いが違うかもしれない)、再発盤のCDを買ってみた。通販サイトの表示には紙ジャケットという表示があるが、ごく薄い2つ折りのパッケージで、デジパックよりも薄く、でもデジパックのように縦より横幅のほうが長くて正方形ではないという中途半端なかたちだ。普通のプラケースのほうが扱いやすいので、このnew packageというのはちょっとがっかり。
《Solstice》は暗い地色のジャケットの中央の小さめのワクの中に水色と青で木が描かれているイラストがある印象的なデザインで、その周囲の地色は暗い紫であったはずなのに、このパッケージではどう見てもただの黒。こうした改変はたぶん廉価にするための方策だろうが、デザインにこだわっていたはずのECMらしくない。

ところで私は、ラルフ・タウナー (Ralph Towner, 1940−) をほとんど聴いていないのだ。LPの《Solstice》を聴いたときもあまりピンと来なくて、そのままになっていた。だからどんな傾向の音だったのかもほとんど忘れている。例のECMっぽい音、といえば全てが包含されてしまうのだけれど、そういう音だったという記憶だけがあった。

矛盾するかもしれないが、私はECMの創る音は好きなのだけれどフュージョンとかニューエイジ・ミュージックと呼ばれる音楽があまり好きではない。フュージョンはその音楽そのものに深みが感じられないので、そしてニューエイジ・ミュージックはそういうジャンルの区分けそのものが嫌いだ。というか、ワールド・ミュージックという称呼と同じで、またJポップをニューミュージックとしたのとも似ていて、業界の十把一絡げな方便に過ぎないからであり、ニューエイジ・ミュージックなどというものは存在しない。

さて、あらためて《Solstice》を聴いてみると、ほとんど過去の記憶の残滓通りだったことがわかる。ラルフ・タウナーはギタリストであるが、ピアノも弾く。聴いてみて一番印象に残ったのは〈Drifting Petals〉であって、しかしそれはギターでなくピアノ演奏の曲である。
一方で、たとえば〈Piscean Dance〉などは音数が妙に少ないのだけれど、いかにも当時のフュージョン系のリズムとノリであり、今聴くと時代性を感じさせてしまう (つまり古い)。

でも〈Drifting Petals〉や〈Nimbus〉の前半のソロ部分のような演奏を聴いてすぐに思い浮かべたのは、エグベルト・ジスモンチである。ジスモンチもタウナーと同様にギターとピアノを弾くし、その音の傾向も一聴したときは似ているように思えてしまう。

ラルフ・タウナーはECMでのソロ名義とは別に、オレゴンというグループでの演奏を継続していて、オレゴンは、まさにオレゴンをルーツとしたローカルなバンドで、マルチリード・プレイヤーのポール・マッキャンドレスとともに、40年以上の息の長い演奏活動歴がある。
このオレゴンの演奏とか、オーソドクスなジャズチューンの曲を聴いてみると、タウナーはやはりアメリカの基本的なジャズがそのベースにあることがよくわかる (たとえばNardisなど)。ジスモンチには、当然だがラテンのテイストがあるが、タウナーにはそれがなく、2人の傾向の違いがよくわかってくる。
《Solstice》はタウナーの音楽活動のなかで比較的初期の作品であるが、ECMの特徴的なリード・プレイヤーであるヤン・ガルバレクが加わっていることで、よりECM的になっているとは言えるだろう。

そういうふうに見てからもう一度、アルバム最初の曲〈Oceanus〉に戻ってみると、アルバム全体のイメージが、かなりガルバレクの個性に引っ張られていることがわかってくるが、同時に、ヨン・クリステンセンのドラミングの美しさがあらためて感じられる。ガルバレクの傑作《Witchi-Tai-To》(1974) における演奏と同様の、細かくクリアなリズムに陶然とする。


Ralph Towner/Solstice (ECM)
SOLSTICE




Ralph Towner: Nardis (solo)
https://www.youtube.com/watch?v=7b3ioveZK9k

Ralph Towner: Witchi-Tai-To (12弦solo)
https://www.youtube.com/watch?v=r_13j5GoNDU

Oregon/Witchi-Tai-To (piano) Viersen Festival 2009
https://www.youtube.com/watch?v=4k7R-kwGImU
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コメント 8

末尾ルコ(アルベール)

蒸し暑いですね~。毎日、ちょっと動くと汗ばむのでたまりません。そんな夜、リンクくださっているラルフ・タウナーの曲はとても心地よく神経を愉しませてくれます。でもラルフ・タウナー、まったく知りませんでした。おかげさまで、音楽鑑賞の幅がどんどん広がっています。リンクくださっている曲以外のタウナーもいくつか試していますが、ついつい目を閉じて浸りたくなります。ギター一本の音楽もいいですね。
フュージョンに関するご意見にはまったく同感です。どこからどこまでを「フュージョン」と呼ぶかまでははっきり知りませんが、そう呼ばれている音楽は概ねつまらないですね。とても「それだけ」で聴く気は起りません。わたしのフランス人の友人は音楽にもとても詳しいのですが、なぜかフュージョン系をかなり好み、フリージャズ系は嫌っています。音楽に関してここだけ趣味が合わず、かと言って無碍に貶すのもなんだし、いつも(う~ん)な感じになっています。「ニューエイジ・ミュージック」という言葉もあるんですね。知りませんでした。確かに実に適当なネーミングですね。「ニューエイジ」というと、1960年代のムーブメントがよく知られていますが、それとは関係ないんですよね。
言葉の問題に関連すれば、日本では「スピリチュアル」という言葉も本来の意味から大きく遠ざかり、貶められてしまっています。まったくやり切れない状況です。  RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2017-06-29 02:35) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

そう言っていただけるとうれしいです。
solsticeは天文系の言葉ですが、
天文は下世話な世の中から逃避するための道具でもあり、
私は子どもの頃、天文に逃げていたんだと思います。

ラルフ・タウナーは私もよく知らなかったので、
フュージョン系のギターというとどうしても
リー・リトナーとかラリー・カールトンとか連想しますので、
あまり深く入りたくないんです。
もちろんそういうジャンルが悪いわけじゃないんですが、
なぜかあまり好きではないので、
この微妙さは自分でもよくわかりません。
たぶん、以前、武道館でサンタナを聴いて、
こりゃダメと思ったトラウマがあるんだと思います。
(サンタナとリー・リトナーは違うといわれればその通りですが、
私にとっては同じようなものなんです)

そういえばフランスのフリージャズというのはあまり聞きません。
フランス人の感性に合わないのかもしれませんね。
ブーレーズの国なのに、と思いますが、
現代音楽とフリージャズは違うのでしょう、たぶん。(^^)

ニューエイジ! あ〜、なるほど。
関係はないと思いますが触発されたのかもしれません。
お手軽にかっぱらったのかもしれず、
ともかくnewを付けるのは
ニューミュージックの例をあげるまでもなく安易です。

よくSF小説のなかにまがいものの宗教みたいな、
胡散臭い変なおじさんが出てくることがありますが、
ああいうのってスピリチュアルの変形というか
パロディですよね〜。(^^;)
by lequiche (2017-06-29 06:58) 

Flatfield

ジャズは詳しくは無いんですが、アメリカ北西部のジャズとかは、南部の暑いジャズとは違い、涼しいですね。 こちらに貼ってあるジャズとか、あまりに技巧に走る奏者よりも聴き易いです。 そういえば(ネットでの聞きかじりですが)、北西部はニューエイジでスピリチュアルな方々(笑 も多く、そちらの方に触発された音楽等も多いとか。。。
by Flatfield (2017-06-29 20:58) 

NO14Ruggerman

フュージョンと言っても幅広く使われたりしています。
ウエザーリポートなどもフュージョンにカテゴライズ
されたりもします。
〈Oceanus〉をネット検索し聴いてみたのですが、
これウエザーリポートのサウンドにそっくりだな、と感じました。
74年録音だとどちらが後先か微妙なところです。
ウエザーの作品をちょっと聴き直してみます。
by NO14Ruggerman (2017-06-30 00:36) 

馬爺

ありがとうございました。
この6年間皆さんのお陰で続けて行く事が出来たんですがちょっと色々な事が有りまして半年くらい休んで見ることにしました、又復活の折にはよろしくお願いいたします。
by 馬爺 (2017-06-30 11:08) 

lequiche

>> Flatfield 様

ウエストコースト・ジャズという言葉があるくらいですから、
東部や中部・南部のジャズとは異なる風土がありますね。
ただ、ウエストコースト・ジャズといった場合、
イメージとしてはカリフォルニアを指すことが多いですし、
ECMはアイヒャーの美学に基づいたレーベルですから
オーソドクスなスウィング・ジャズとは異なり、
一種のイージーリスニングと捉えることもできます。
それはジャズに限らずロック系でも、ハードな指向でなく、
リラックスした音楽が好まれる傾向があるのかもしれないです。
スピリチュアル、言えてます。(^^)

タウナーはワシントン州の生まれですから、
ワシントン、オレゴンといった北西部特有の
アメリカのなかでのローカリズムにこだわりがあるのかもしれません。
by lequiche (2017-06-30 12:42) 

lequiche

>> NO14Ruggerman 様

確かにフュージョンというのはすごく漠然としたカテゴライズで
どこからどこまでというドメインが曖昧です。
あぁ、ウェザー・リポート! そうなのかもしれませんね。
特にザヴィヌルのコンセプトには根底にOceanus的なものがあります。
ただ、本文にも書きましたがヨン・クリステンセンのドラムは
明らかにヨーロピアンな傾向があって、
これがアメリカンなジャズと少し違う低温な印象を受けます。
by lequiche (2017-06-30 12:43) 

lequiche

>> 馬爺様

そうなんですか。休息が必要なときもありますね。
復活のときをお待ちしております。
by lequiche (2017-06-30 12:43) 

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