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ブロッサム・ディアリーを聴く [音楽]

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blossom dearie/my gentleman friend (1961) ジャケット

ブロッサム・ディアリー (Blossom Dearie, 1924-2009) は、ピアノを弾きながら歌うニューヨーク生まれのジャズ歌手である。一度聴いたら忘れられないコケティッシュとも思える声に特徴があり、wikipediaでは light and girlish voice と表現されているので、そういうイメージでとらえられているのかと思っていたが、あらためて聴いてみると全然ベティ・ブープなどではない。シンプルな中に、しっかりと芯の通ったヴォーカルのように思う。そしてピアノが美しい。ナット・キング・コールもピアノが上手かったが、天は二物を与えることもあるのである。

ディアリーはアメリカで、ウディ・ハーマン・オーケストラ (the Blue Flames) やブルー・レイズ・バンド (the Blue Reys) などのジャズ楽団のコーラス・グループで歌っていたが (カッコ内はグループ名)、1952年にフランスに渡る。そしてパリでクリスチャン・ルグランなどとブルー・スターズというコーラス・グループを結成。このグループはレ・ドゥブル・シスを経てスゥイングル・シンガーズへと連なる系譜にある。ちなみにスゥイングル・シンガーズは8人のジャズ・スキャットのコーラス・グループとして知られ、バッハの曲をアレンジした《Jazz Sébastien Bach》(1963)という大ヒットアルバムなどがある。メンバーのひとり、クリスチャン・ルグランはミシェル・ルグランの姉である。

しかしディアリーはコーラスで歌うことから離れてアメリカに戻り、ソロのヴォーカル・アルバムとして最初に出されたのが《Blossom Dearie》(1957) である。パリの香りはこのソロの1stアルバムにも生かされており、〈It Might as Well Be Spring〉などもフランス語で歌われている。
正確には《Blossom Dearie》の前にプレスティッジ、エマーシーなどから出されたアルバムがあるが、ソロ・ヴォーカルということで考えればこのヴァーヴからのアルバムがディアリーのキャリアの第1弾と考えてよいのではないだろうか。

《Blossom Dearie》(1957) から《My Gentleman Friend》(1961) までの初期アルバム6枚をCD3枚に収めてあるReal Gone JAZZレーベルの廉価盤《Six Classic Albums》で聴いた。ピアノ・トリオにギターを加えたクァルテットというのがほとんどのフォームであり、どれもが同じパターンといえばその通りなのだが、スタンダードでメインストリームなジャズ・アルバムとして聴ける良質な音で綴られている。ところどころに入るフランス語詞も違和感がない (5枚目の《Soubrette Sings Broadway Hit Songs》(1960) のみラッセル・ガルシアによるオーケストレーションとなっているが、トゥッティで鳴るようなオケではない)。

私は長い間、アルバム2枚目の《Give Him the Ooh La La》(1958) のアナログ盤でしかディアリーを知らなかったが、1曲目の、ランニング・ベースだけで始まりそれに歌の乗る〈Just One of Those Things〉は今聴いてもスリリングだ。フランク・シナトラとは全く異なるスピードなのが心地よい。このアルバムの〈Just One of Those Things〉〈Like Someone in Love〉そして〈Between the Devil and the Deep Blue Sea〉と続く導入部は秀逸である。(でも〈Between the Devil and the Deep Blue Sea〉の邦題が 「絶体絶命」 だと初めて知ったのだが、直截すぎて……)

ざっと聴いて心惹かれるのは1枚目のアルバムのロレンツ・ハートとリチャード・ロジャースの〈Ev’rything I’ve Got〉のここちよい韻の連鎖だったりして、でもソロ第1作としての気負いもあまり感じられないのに、1曲1曲がとても練られているのはさすがである。インストゥルメンタルの〈More Than You Know〉のしっとりしたギターとピアノのインタープレイも心に沁みる。ギタリストはハーブ・エリス、マンデル・ロウ、ケニー・バレルと変わっているがいずれも名演である。
アルバム5枚目のオスカー・ハマースタインII&リチャード・ロジャースの〈The Gentleman Is a Dope〉の暗くスゥイングするヴォーカルとオーケストレーションも美しい。ガルシアは木管の使い方が洒落ている。(選択したのが2曲ともたまたまリチャード・ロジャースだったが、その作品は書かれた映画やミュージカルそのものが知られなくなっても曲だけが残る典型である。ロジャースについては→2016年03月21日ブログに簡単に書いた)
そしてディアリーの歌はほとんどがごく短い曲なのに、その空間にジャズのエッセンスが満ちている。YouTubeには若い頃から21世紀になってのライヴまで幾つもの動画があるが、年齢を重ねてからの姿も凜としていて、その基本は柔らかなBe Bopの形見である。


Blossom Dearie/Six Classic Albums (Real Gone JAZZ)
6 CLASSIC ALBUMS




Blossom Dearie/I Wish You Love
live french TV 1965
https://www.youtube.com/watch?v=4hGjzuXchGg

Blossom Dearie/Just One of Those Things
https://www.youtube.com/watch?v=x4PzlqMTaNs

追加リンクしました。
Blossom Dearie/Try Your Wings
https://www.youtube.com/watch?v=9an3X-qlo5Y
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コメント 10

青山実花

「死ぬまでにしたい10のこと」という
映画の中で、
ブロッサム・ディアリーを初めて知りました。
必死で名前を憶えて、
CDを買った記憶があります^^

by 青山実花 (2017-05-17 11:33) 

lequiche

>> 青山実花様

そうなんですか!
その映画は知りませんでした。
母親役がデボラ・ハリーですね。(^^)
歌われているのは〈Try Your Wings〉だそうですが、
すぐにディアリーだとわかる特徴的な声質。
でもディアリーは、ジャズシーンにおいては
キワモノみたいに見られていた時期がずっとありました。
わかってないょなぁ、と思います。
ぜひ映画を観てみたいです。
by lequiche (2017-05-17 12:27) 

すーさん

ブロッサム・ディアリーさんは「萌え声ジャズ」といって
嫁がいつもYouTubeで見せてくれます^^。

嫁がまた、加護亜依ちゃんがジャズをやっていたときに
「これを目指したのかな」と言ってました(笑)。

ヴォーカルの教室で練習曲を研究するのに(声音以外は)癖のない
正統派な歌い方でかなり参考になるので、↑記事にあった
「It Might as Well Be Spring」も発表会用に練習するときに
聴いたそうです♪。

※嫁は萌え声ではなく、ドスの利いた声ですが・笑。


ワタスもコケティッシュなジャズヴォーカルは少ないので
好きでたまに聴いてるんですよ^^♡。
by すーさん (2017-05-17 16:52) 

末尾ルコ(アルベール)

ブロッサム・ディアリー・・・、し、知りませんでした。先ほどまでPJ Harvey を聴いていたのですが、急遽リンクくださっている動画へ移行しました(笑)。特に、『Just One of Those Things』、『Try Your Wings』、いいですね。発音も明瞭で、歌詞も原語で実に分かりやすいです。こんな歌い方はジャズシンガーの中では珍しいのでしょうか。わたしの知っている範囲では(なにせ今、ブロッサム・ディアリーを知ったので、ジャズ・ヴォーカルに関しては庭先の池くらいの範囲しか知らないんだと痛感していますが 笑)、こうした歌い方はあまりいないような。今、親切なYouTubeさんが勝手に『Fly Me To The Moon』をかけてくださってますが、このあまりに有名な曲も完全にブロッサム・ディアリーの世界となっているように感じます。

>その空間にジャズのエッセンスが満ちている。

なるほどです。今の時代に聴くと、またグッと新鮮に感じるというのもありますね。クオリティの高い芸術は、いつでも時代を超えます。  RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2017-05-18 02:16) 

lequiche

>> すーさん様

「萌え声ジャズ」 ですか。なるほど、そうですね。(^^)
でも、昔に較べると今は初音ミクとか、EQかけたPerfumeとか
声質のOK幅は広がってきてるように思います。
ですから以前聴いたときほどディアリーは変じゃないです。

そうそう、ディアリーは正統的な歌いかたですね。
ひねって歌う歌い方より、ストレートで素直な歌い方のほうが
私も好きです。
だからジョニ・ジェイムスなんかもジャズとポピュラーソングの
境界線上みたいな感じもあるんですが、好きなんです。

以前、ジョニ・ジェイムスについても書きましたが、
http://lequiche.blog.so-net.ne.jp/2014-12-26
リトル・ガール・ブルーっていう曲も実はリチャード・ロジャースで
私はリチャード・ロジャースが好きなだけなのかもしれないです。
https://www.youtube.com/watch?v=3YwTUuH4Sjk

加護亜依ちゃんは、目標はコケティッシュかもしれないですけど、
声もフツーだし、それにう〜ん・・・ですね。(^^;)
私はシマブーがいいと思っていたんですけど、
この路線はやはり無理があったのかなぁ。
ナット・キング・コールのOrange Colored Sky:
https://www.youtube.com/watch?v=8vo9jD9rLjI
あ、でもナタリー・コールなどと較べないようにお願いします。

それより奥様の歌をお聴きしたいですね。
バックにサックスが流れたりして。(^^)
by lequiche (2017-05-18 02:32) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

どうもありがとうございます。
でもPJ Harvey、ファイアバードとオレンジのアンプ、
メチャかっこいいです。
https://www.youtube.com/watch?v=A29BMj3v86w

ブロッサム・ディアリーはそんなに有名じゃないです。
ちょっとマニアックなジャンルに分類される人です。
でも、ディアリーの歌い方はうまいですね。
珍しいといえば珍しいかもしれませんが、正統派です。
声質に幻惑されているだけです。
そしてピアノも、ものすごくうまいとかではないんですが、
シンプルでいて音がマイルドで洒落ています。
安心して聴けるピアノです。
たぶんもっとガシガシ弾こうと思えば弾けるんです。
でも彼女はそうしないんです。それがスタイルだから。

〈Try Your Wings〉は青山実花さんのコメントがあったので
追加しました。
これも《Give Him the Ooh La La》に収録されています。

いままで名前を知ってはいたのですけど、
そんなにマジメには聴いていませんでした。
今回、初期アルバム6枚を聴いてみて、
あらためてまだ知らないこと/ものが一杯ある、と思った次第です。
by lequiche (2017-05-18 02:54) 

トロル

この日記を読ませて頂いて、1990年(日本では1979年発表のLP)に3曲追加曲を加えて発売されたCDを引っ張り出して聴いています。
「Blossom Dearie」ヴァーヴレコードって書いてあります。
iPadに入れて久しぶりに聴きたくなりました。
今の季節にいいですね〜 手放さずにいて正解の作品だと思いました。
by トロル (2017-05-18 22:31) 

lequiche

>> トロル様

メガネをかけているファーストですか。いいですね〜。
単品のアルバムには別テイクが追加されているようで、
それも聴いてみたいです。
60年も前の作品なのに、古びていないで
センスに光るものがありますね。(^^)
by lequiche (2017-05-19 12:40) 

そらへい

ブロッサム・ディアリー、
確かに一度聞いたら忘れられない歌声ですね。
私がよく聞くのは、メガネをはめてレコーディングしているジャケットのものです。
ボーカルは持っているアルバムがインスツルメンタルジャズに比べて少なくて、これからもっと開拓していかなくてはと思っています。
知らない魅力的な歌い手が過去、現在といそうです。
by そらへい (2017-05-21 21:30) 

lequiche

>> そらへい様

そうですか。上のコメのトロルさんと同じアルバムですね。
ジャズがお好きなかたは歌ものじゃないのが好き、
ということが多いように思います。
たまに聴くと、印象が変わって聞こえるのがいいのかもしれないです。
知らない歌手ってとても多くいそうですね。(^^)
by lequiche (2017-05-22 01:44) 

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