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バルトーク《組曲第2番》— バルトークとバックハウス [音楽]

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Zoltán Kocsis (1971/19歳の頃)

アントン・ルビンシテイン・コンペティションは1890年から1910年まで5年おきにパリで、ルビンシテイン (Anton Grigoryevich Rubinstein, 1829−1894) によって開催されたコンクールである。その1905年の回に自信を持って出場したベラ・バルトークは、第2位という結果に終わってしまう。第1位はヴィルヘルム・バックハウス。2人は共に1881年の生まれで、そのとき21歳であった。
おそらくこの結果が、ピアニストでなく作曲家で行くことをバルトークに決心させたきっかけだったのかもしれない。

昨年11月、ゾルタン・コチシュ (Zoltán Kocsis, 1952−2016) の訃報に愕然としたことを書いたが、フンガロトン盤のBartók New Seriesは彼が残してくれた美しき遺産である。そのなかから《組曲第2番》Sz34 (BB40) を聴く。SACDのシリーズ番号は6である。
組曲第2番以外の収録曲は《ルーマニア舞曲》Sz47a、《ルーマニア民族舞曲》Sz58、《舞踏組曲》Sz77で、邦題では舞曲だったり舞踏だったりするが、全てタイトル中にdanceという言葉が入っている作品である。

組曲第2番はそれらのdance曲に先行する作品で、コシュートよりは後だが、いわゆる若書きのオーケストラ作品であり、まだバルトークらしさが出ていたり出ていなかったり、という状態がかえって興味深い。そしてこの曲の作曲年代は1905~1907年、つまりルビンシテイン・コンペのあった年である。組曲は4曲で成立しているが、そのうちの3曲は1905年に書かれたという。
この曲はその後、1921年と1942年に改訂されているが、そうだとしてもごく若い頃のテイストは色濃く残されているように思う。
それが《ルーマニア舞曲》になると、6年後の1911年に書かれたためか、もう明らかにバルトークらしい音が確立されていて、その対比が際立っている。このSz47aはオーケストラ版であり、そのもととなるピアノ版 Sz43はさらに1年前の1910年であるので、つまり大雑把にいえば、このあたりから作曲家としての自覚とか自負が強くなってきたのではないだろうか。

また一連の民族的タイトルの曲は、コダーイとの民謡収集のフィールドワークの成果でもあり、しかもそれを単純に作品として取り込むのではなく、自分の作品として消化していったところにバルトークの特質がある。逆にいえば西欧伝統音楽的なフィルターで濾過されていて、純粋なフォークソングではないという見方もできる。

組曲第2番の場合、リヒャルト・シュトラウスやブラームズの影響がまだある、という世評は確かにその通りであり、また1905年にパリで出会ったというドビュッシーの影響もあると思われる。
しかし、組曲の4曲のうち、第3曲目のAndanteと第4曲目のComodoは、そうした先輩作曲家の影響の中にありながらも、ときどき独特の音が顔を出す。
バス・クラリネットのソロから始まる第3曲Andanteは、その微妙なブレンド感が面白い。旧態依然なオーケストレーションなのに、ところどころそうではない部分が混入する。だが全体としてはまだ自己のスタイルとしては確立していない、そんな感じである。

第4曲Comodoになるとオケの鳴らし方に明らかにバルトークっぽい音がする。印象としては金管はまだリヒャルト・シュトラウス風なのだが、木管がバルトークといった感じだ。しかも曲の後半に行くにしたがってだんだんとバルトーク色が強くなるような気がする。
このCDのトラックでいうと、tr01から04までが組曲第2番であるが、その後、tr05のルーマニア舞曲が始まると、明らかなバルトーク・サウンドが聞こえてきて、その落差にちょっと笑ってしまう。

ルビンシテインのコンクール出場者にバックハウスがいなかったら、きっとバルトークが1位だったろう。でもそうだったとしたらバルトークはピアニストとしての道に進み、その後のバルトークの作品は無かったかもしれない。ちょっとしたきっかけがその後の展開を全く異なったものにするのは、よくあることなのだ。


Zoltán Kocsis/Bartók: Suite No.2, Rumanian Dance etc. (Hungaroton)
Bartok New Series Suite No.2 Rumanian Dance




Zoltán Kocsis & Barnabás Kelemen/Bartók: Romanian Folk Dances
https://www.youtube.com/watch?v=XX-XJdnu1I4
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コメント 4

hatumi30331

寒いね〜
寒くてぐっすり寝過ぎました。へへ:

by hatumi30331 (2017-01-15 07:11) 

lequiche

>> hatumi30331 様

全国的に寒いみたいですね。
大雪のところもあるようですし。
暖かくして寝るのが一番です!(^^)
by lequiche (2017-01-15 14:27) 

末尾ルコ(アルベール)

このお写真、カッコいいですね~。デビュー当時のローリング・ストーンズにいても違和感ない感じです。今、リンクしてくださっている動画を視聴しながら書いていますが、これは素敵な曲ですね。ひょっとしてわたし、知らなかったかもしれない。ご紹介、ありがとうございます。夢幻的な音の快感に当然としてしまいます。フェイバリット曲の一つに、既になりました(笑)。 わたしずっと以前にルーマニア語をかじろうとした時期があって、しかし現在のようにネットでいろいろ調べられる時代ではなく、しかも高知ではショボい『ルーマニア語入門』くらいしか見つからず、必然的に挫折してしまいました。で、何を言いたいのかというと(笑)、東欧とか中央アジアとか、やや辺境的な地域の雰囲気に反応してしまう習性があるのです。「バルトークっぽい」というのがいかなるものか即座に分かるほどバルトークを聴き込んでおりませんが、ご紹介くださっている曲には一聴して魅了される力を感じます。 RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2017-01-15 23:25) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

コチシュは18歳からプロのピアニストですが、
シフ、ラーンキとともにハンガリー三羽烏と呼ばれ
若い頃にはミーハーな人気もあったようです。
若い頃の動画で、コチシュとラーンキが戯れている (^^)
動画がありますが、K497のモーツァルトなど
非常にシャープです。
https://www.youtube.com/watch?v=xoErMxHLNZo
の15:59から

《ルーマニア民俗舞曲》は
なんともいえない哀愁がありますね。
Sz56がピアノ版、Sz68が管弦楽への編曲版ですが、
このヴァイオリンとピアノ用のは
たぶんゾルタン・セーケイによる編曲だと思います。
セーケイはハンガリー弦楽四重奏団の1stの人です。
http://lequiche.blog.so-net.ne.jp/2016-08-27

バルトークの音楽の特徴として一種の暴力性が挙げられます。
だからといって乱暴に演奏するということではないのですが、
それをカンチガイしてしまう人がよくいるようです。
たとえばアレグロ・バルバロは
文字通り 「野蛮な」 という意味ですが、
単純な強打とか粗雑ではなく、知的な野蛮さが要求されます。
Allegro Barbaro
https://www.youtube.com/watch?v=AwCP2US7BaU

私も中央ヨーロッパではないところが好きです。
辺境こそシンパシィの働かせ具合があるというものです。
以前の記事に書いたリチャード・パワーズ『オルフェオ』で
主人公がバルトークの幻影を聴くのは、
私にとっては最も幻惑的なシーンなのです。
http://lequiche.blog.so-net.ne.jp/2015-10-23
by lequiche (2017-01-16 15:58) 

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