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萩尾望都SF原画展に行く [コミック]

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吉祥寺で開催されている萩尾望都SF原画展に行く。
武蔵野市立吉祥寺美術館と名前はいかめしいが、FFビルの7Fといったほうが通りがよい。
この展覧会のことはRyo1216さんのブログ記事で知りました。Ryo1216さん、ありがとうございます。

萩尾望都のことは、以前、NHK-2の《漫勉》をブログ記事にしたが (→2016年03月05日ブログ)、いままで原画を見たことはたぶん無かったと思う。今回の展示はSFを題材とした作品に限った展示ではあったが、《漫勉》の記憶がまだあるなかで、とても刺激的な内容であった。

作品の中で最も古いものは 「あそび玉」 (1971) である。ごく初期の描線は、最小の線で最大の効果を出すという手法のように感じられて、この時代の絵に私はとても執着していたのだが、今回、年代を追って見ていくと、萩尾の絵にはそのように発展して変容していった必然性があり、後期の絵を 「怖すぎる」 として退けていたのは偏見だったことがあらためてわかる。

「11人いる!」 (1975) は、いかにもSFっぽいSF作品として一番最初に認識できるものであるが、その口絵等のカラー原稿はとても懐かしく、かつ古びていない。
「11人いる!」 の両性体という概念はル=グィンの『闇の左手』からのイメージであるが、タダとフロルは 「トーマの心臓」 のユリスモールとエーリクであり、悲しい終わり方をした 「トーマ」 のストーリーを挽回しようとして、この 「11人いる!」 に2人を再びキャスティングしたのでは、というふうにとっていたし、それは間違いではなかったと思う。
特に続編の 「東の地平西の永遠」 (1976-1977) は、見知らぬ宇宙の土地に郷愁を感じさせることにおいて、スター・ウォーズ的なdéjà-vuと同様なにおいがする。ソフトな筆致のカラー原稿が美しい。

今回、河出書房新社から出版された画集『萩尾望都SFアートワークス』は、そのカヴァーがスター・レッドと阿修羅王になっているが、特に阿修羅王のキャラクター (「百億の昼と千億の夜」 1977-1978) は、光瀬龍の原作 (1967) をよりわかりやすく具現化しただけでなく、ジェンダー的にはフロルの発展系であり、こうした強い女性を描くことによって (女性だけでなく男性でもそうだが)、その後の萩尾作品を方向づけた設定と言えるのではないだろうか。
私はこの時期だと、マイナーだけれど 「A-A’」 が好きだったりする。

今回の原画展では、《漫勉》でも十分に窺い知れていたことだが、萩尾の絵の描き方の徹底したアナログ的なこだわりの手法をよく知ることができた。
おそろしく細い線がある。それは0.1mmなんてものではなくて、もう一桁下の、どうやったらそのようにインクが乗せられるの? というほどの細線である。宇宙の星々の描写でも、細かい星をホワイトで打っているのだが、そのものすごく小さい点は半端ではない。それはもちろん一般的な点描や線描でも同様である。こうした細かさは、コミック雑誌の厚手のぼさっとした紙上には再現しきれていない/再現することは不可能なのではないかと思われる。
そこまで細く描いても、印刷上の限界ですべては飛んでしまうか、つぶれてしまうかなのだ。でも萩尾はそのように描くことをやめない。それは自分に納得できないからだろうと推察できる。

もしデジタルで、ペンタブレットで細い線を描いたならば、それはどんなに高解像度であっても、四角形の連鎖、ぎざぎざの連続に過ぎない。ピラネージの版画の画集が、スクリーンで分解することによりモヤッとしてしまうのと同じで、画家のあらかじめの意図が全く死んでしまうように、そうしたデジタルのシステムは萩尾にとって意味が無いのである。それはどこまでいっても近似値だからである。

ハヤカワの文庫のカヴァー絵も、その時代があらわれていて懐かしい。トマス・バーネット・スワンの『薔薇の荘園』のカヴァーの原画を見ても、おそろしく細かく描き込まれているが、実際の印刷物には反映されていない。と思って家の書架を探したが、どこにいってしまったのか出てこなかった。
今回の展示は、SFというジャンルに限られているのに、知らない作品も多く、萩尾がいかに多くの作品を描き続けていたのかがよくわかった。SF系以外の原画も是非、見てみたいと痛切に感じている。


萩尾望都 SFアートワークス (河出書房新社)
萩尾望都 SFアートワークス

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コメント 10

青山実花

このような催し物がされていたのですね。
29日までですか。
うーん、行けるかな・・・、
微妙です。
でもオフィシャルページを見てみましたら、
山岸凉子展が今年の9月から!
これは絶対行きたいです。
by 青山実花 (2016-05-24 05:53) 

リュカ

わたしは百億の昼と千億の夜が大好きです^^
さきに萩尾望都さんの漫画をよんで、そのあとかなり大きくなってから光瀬龍の原作を読みました。
当時は漫画も難しくて「???」ってところが多かったけど
今よんでもすごく面白いなーって思います^^
考古学の勉強したのも、弥勒菩薩が嫌な奴なんて思うようになったのも、このマンガの影響ある(笑)
今ももちろんこの漫画は愛読書です♪
by リュカ (2016-05-24 09:59) 

シルフ

漫画の原画展はよく行くんですが、萩尾望都さんは行ったことないなぁ。友人に大ファンがいて、数枚の原画を見せて貰ったことはありました。武蔵野市立吉祥寺美術館っていうんですか。面白そうな場所ですね。
by シルフ (2016-05-24 10:58) 

lequiche

>> 青山実花様

実は展示替えがあったみたいで、
前期に展示されていた作品は見逃してしまいました。
今回の展示のよいところは
10cmまで近寄ってでも見れることです。(コラコラ ^^;)
私は萩尾望都作品の展示は近代美術館でやってもいい
とさえ思っていますが、
そしたらそんなに近くでは見られなくなってしまうと思います。

あ−、ほんとだ! 山岸凉子!
そうそう。もっと怖い絵の人がいましたね〜。
天人唐草怖いし。アラベスクも違った意味で怖いかな〜。(^^;)
私は『妖精王』が好きです。
by lequiche (2016-05-24 11:36) 

lequiche

>> リュカ様

そうなんですか。
光瀬龍作品に共通して流れるのは虚無感ですが、
百億は発想がすごいし、構成が大変よくできていますね。
弥勒菩薩悪者!(^o^)
以後、弥勒菩薩像を見ると
オレ、そんな悪くねーよ。とか言い訳してるみたいで。(^^)

白澤社というところのブログを読むと、
光瀬龍のこの作品はプラトンのティマイオスやクリティアスを
どう読んだかが反映されていると書いてあります。
いわゆるアトランティス伝説のことですが、
私も最初に買ったプラトンは
ティマイオス/クリティアスでした。(笑)
by lequiche (2016-05-24 11:37) 

lequiche

>> シルフ様

原画を持っていられるご友人がいらっしゃるんですか。
それはすごいです!
チャールズ・シュルツの原画もすごかったですが、
超一流の作品には独特の品格というか香気がありますね。

武蔵野市立吉祥寺美術館というのは、
以前、伊勢丹吉祥寺店というのがあって、
そこの別館だったところです。
吉祥寺は小さくまとまっている街ですが
親しみやすいところです。
by lequiche (2016-05-24 11:38) 

末尾ルコ(アルベール)

萩尾望都はあまり読んだことがないんです。また機会を見て、読んでみようかな。女性漫画家は、竹宮恵子はかなり読みました。そして山岸涼子は、夜は表紙を見たくないほど(笑)怖かったです。登場人物の表情が凄かった・・・。前にも書いたかと思いますが、岡田史子は崇めてました。そしてまったく傾向は違いますが、土田よしこが大好きでした。

                   RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2016-05-24 23:52) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

萩尾は岡田史子のことをリスペクトしていましたね。
ごく初期の不安な雰囲気の短編にはその影響があると思います。

竹宮惠子は良い意味で、よりエンターテインメント性が強いですが、
それはたとえ風木でもそうで、
いろいろなジャンルへの開拓精神が旺盛でした。
たとえばロンド・カプリチオーソとか、
あの時期にフィギュアを題材に、っていうのはすごいと思います。
また、変奏曲があったからこそ、のだめが出て来たんだと思います。

山岸凉子の絵っていうのは一種のカリカチュアで、
線そのものの描き方だけで、それがモノをいってるように見えます。

土田よしこですか。ギャグとしては一種の王道ですよね。
by lequiche (2016-05-25 00:36) 

向日葵

いよいよ「今日迄」ですね。

「駄目だろうなぁぁぁ。。」
とは思い、覚悟はしていましたが、やはり行く時間は
取れませんでした。比較的近いのに。。電車ででも行けるのに。。

残念ですー!!

萩尾望都、竹宮恵子、両巨頭が少女漫画を席巻した時代、
まさに青春期真っただ中でした。

いつかワタクシもー!
と、つい身の程知らずに思ってしまったほど!!

この間のNHKの特番も面白かったですね。

9月には「山岸涼子」ですか?
わわわ!
こちらも行かなくては!!

>青山さん、ご一緒しませんかぁ~~ぁ?
    (って、気が付かれるかしらん・・??)
by 向日葵 (2016-05-29 07:38) 

lequiche

>> 向日葵様

そうですね〜、
向日葵さん、今はお忙しいでしょうから。
でも残念でしたね。
NHKの番組もすごかったですが、
原画はもっととんでもなくすごかったです。

山岸凉子展もありますが、
その前にLaLa40周年記念展というのがあります。

63名で270点ということですから、
平均するとひとり4点くらいですけど、
大島弓子、山岸凉子という名前も見られます。
私は成田美名子先生が好きなんですよね〜。
ポスターでも一番手前だし。
↓見てみてください。
http://www.gengaten.info/2016/07/lala40/

あと、大和和紀展というのもあります。
http://www.gengaten.info/2016/06/yamatowaki-tokyo/
by lequiche (2016-05-30 01:55) 

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