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五番目の季節に — 大貫妙子 [音楽]

大貫妙子_横顔.jpg

HMVのレコードショップというのが渋谷にできて、アナログ盤を再プレスしたのだというニュースがあった。ところが予約はしたのだけれどオンラインショップでは扱っていなくて、店まで買いに行かないとダメらしい。なんともアナログなのだけれど、あ、だからアナログなのか、ということで引き取りに行ってきた。

渋谷に行くのは久しぶりのような気がする。店は東急ハンズの裏手にあって、まだそんなに商品数があるわけでもなく、新装開店にしてはちょっと力の抜けた感じ。レコードの街・渋谷!みたいな惹句がノスタルジックだけれど、私が実際に渋谷で音楽ソフトを買っていた頃にはメディアはもうすでにCDで、レコードの街の頃は知らない。でもなんとなくその雰囲気はわかる。

渋谷は、平日の午前中だったためもあるけれど閑散としていて、夏の白い太陽だけが眩しく、今はもうよそよそしい他人の街だった。街並みも随分変化している。どこにでもあるファストファッションの店が街の個性をわからなくしている。ぎらぎらしていた渋谷は毒気を抜かれてしまったようで、パルコの中の店もSTUDIOUSのようなさらっとしたブランドで占められ、パルコパート2の跡地は一番搾りのビヤガーデンになっていた。

買ってきたレコードは大貫妙子の2ndアルバム《SUNSHOWER》で、1stアルバムとこの2ndを聴くことはあまりないのだけれど、単純にアナログ盤は珍しいと思ったので。
『大貫妙子デビュー40周年アニバーサリーブック』という本も出ていて、40周年という息の長さにびっくりする。シュガーベイブを経てソロの1〜2枚目の頃はまだアメリカンで、キャロル・キングとかジャニス・ジョプリンとか、自分の声質に合わない歌唱をめざしていたことを、この本の中の対談でも語っている。当時の写真を見るとウェーヴのかかった長い髪にきつい瞳で、ウッドストックのにおいがする。

転機となったのは坂本龍一の編曲が含まれる3枚目の《Mignonne》か、アルバム的には4枚目の《romantique》からではないだろうか。
坂本龍一は本人自身も 「歌を聴かない」 と書いていて、それは歌詞がかなり重要な大貫作品への挑戦状みたいでもあるが、つまり坂本にとっては音そのものが音楽の主体であって歌詞にはそれほどの重要さを感じていないのだろう。逆に1990年から93年頃に編曲をした小林武史は歌詞にこだわる人だったとも言っている。
だが大貫自身もその作詞方法は曲先で、まずメロディがありサウンドがあって、最後に歌詞を付けるのだということで、だったら坂本が曲だけでアレンジしてしまうのが悪いこととも思えない。歌詞がなくても音の情感だけで音楽はわかるはずだ。

私にとっての大貫妙子の偏愛アルバムは1987年9月の《PURE ACOUSTIC》から10月の《A Slice of Life》、そして1988年9月の《PURISSIMA》までの3枚で、それらは樋口一葉への形容に倣えば奇跡の13カ月であって、またこの時期は坂本龍一編曲期と小林武史編曲期の谷間にも位置する。

《A Slice of Life》はギタリスト・大村憲司のアレンジによるもので、その時代錯誤的なGSサウンド風なルームアコースティクが快い。深いリヴァーブ。もちろん大貫本来のオーディナリーな曲である〈横顔〉とか〈新しいシャツ〉も好きなのだけれど、加藤和彦による《romantique》の〈果てなき旅情〉とか《Aventure》の〈ブリーカー・ストリートの青春〉に通じるノスタルジックなサウンドの曲に惹かれるときがあって、このアルバムはそうしたテイストに満ちている。
一方の《PURISSIMA》は緻密な黒耀石のような作品で、ジャズ風な〈Monochrome & Colours〉にアルバムのイメージは凝集している。

大貫妙子の曲はヴァラエティがあるようにみえて、ずっと変わらない。服のサイズが20歳代の頃からずっと変わらないそうだが、それと同じように変わらなくて、トレンドに左右されない永遠のスタンダードのように思える。

大貫妙子1988_1989.jpg


大貫妙子デビュー40周年アニバーサリーブック (河出書房新社)
大貫妙子 デビュー40周年 アニバーサリーブック




大貫妙子/SUNSHOWER (日本クラウン)
SUNSHOWER




大貫妙子/A Slice of LIfe (midi)
A Slice of Life




横顔 with 矢野顕子
https://www.youtube.com/watch?v=kTYka6B0ou0
黒のクレール/突然の贈り物
https://www.youtube.com/watch?v=7Z6EfACV4t8
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コメント 2

Loby

”今は懐かしい”レコードですか?
現在でもレコードファンはいるのですね。
ステキなアルバムを購入されてよかったですね^^b

by Loby (2014-08-21 22:38) 

lequiche

>> Loby 様

最近、アナログ盤がちょっとブームみたいです。
再発盤でもアナログ盤を一緒に発売しているのを見かけます。
音が柔らかくて暖かいし、
またジャケットが大きくてデザイン性もありますし。

デジタルよりメディアが変質せず、安定しているというのも
その要因なのかもしれませんね。(^^)
by lequiche (2014-08-23 15:50) 

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